親がクリア(ノーマル)でも遺伝病になる?キャリア、アフェクテッドとの違い

車いすを使う犬

遺伝子が原因で起こる病気「遺伝性疾患(遺伝病)」。
目が見えなくなる「進行性網膜萎縮症(PRA)」、全身に麻痺が起こる「変性性脊髄症(DM)」など病気の種類はさまざまです。

遺伝子が原因なので治療が難しく、いつ発症するかもわかりません。

遺伝子検査で原因遺伝子を持たない動物だけを繁殖に使えばいいのですが、なかなかその通りにはいかないペットビジネス業界。

遺伝病がどのように受け継がれるのか?クリア(ノーマル)、キャリア、アフェクテッドの違いや、遺伝病が無くならない原因などをご紹介します。

遺伝性疾患とは

子は親の遺伝子をひとつずつ受け継ぐ

「遺伝性」の名の通り、遺伝性疾患は親から子へ病気の原因遺伝子が引き継がれることで発症します。

遺伝子にはふたつでひとつという性質があります。(対立遺伝子)
子は両親からひとつずつ遺伝子を受け継いで、対となる遺伝子を持ちます。

片親だけが病気をもっていても子どもに受け継がれるのは、これが原因です。

遺伝の例

クリア、キャリア、アフェクテッドの違い

遺伝病の原因遺伝子を持っているかどうかは、遺伝子検査でわかります。
遺伝子型(組み合わせのパターン)によって3つのタイプに分けられます。

クリア(ノーマル)
遺伝病の原因遺伝子を受け継いでいません。発症の危険性が低く、繁殖にも問題ありません。
キャリア
「キャリア(carrier)」は「保因者」という意味。片方の親犬から遺伝病の発症遺伝子を受け継いでいます。発症リスクがあり、子供に遺伝する危険性もあります。
アフェクテッド
「アフェクテッド(affected)」は「病気に侵された」という意味。両親から遺伝病の発症遺伝子を受け継いでいます。子供に遺伝病の遺伝子を受け継いでしまいます。

クリアの親からも遺伝病の子が産まれる?

片方の親がクリア、つまり遺伝病の原因遺伝子を持っていなくとも、もう片方の親がキャリア、アフェクテッドの場合は遺伝病を発症する危険性があります。

対立遺伝子のうち、「A」が正常な遺伝子、「a」が変異した遺伝病の原因遺伝子と仮定すると、両親と子の遺伝子は以下のような組み合わせになります。

両親の組み合わせ クリア(AA) キャリア(Aa) アフェクテッド(aa)
クリア(AA) クリア(AA) クリア(AA) キャリア(Aa)
キャリア(Aa)
キャリア(Aa) クリア(AA) クリア(AA) キャリア(Aa)
キャリア(Aa) キャリア(Aa) アフェクテッド(aa)
アフェクテッド(aa)
アフェクテッド(aa) キャリア(Aa) キャリア(Aa) アフェクテッド(aa)
アフェクテッド(aa)

「a」遺伝子を持っていると遺伝病のリスクがあるので、クリア×キャリアの組み合わせでも遺伝病に関する遺伝子を受け継ぐのがわかります。

どの遺伝子を受け継ぐかはランダムなので、キャリアやアフェクテッドの子は常に遺伝病のリスクがあります。
つまり、安全な繁殖には「クリア同士」しかないと言っても過言ではありません。

ただし遺伝子には「顕性遺伝」「潜性遺伝」という性質があるので、「Aa」の組み合わせでは発症しない病気もあります。

顕性遺伝/潜性遺伝
昔は「優勢遺伝」「劣勢遺伝」と言われていた言葉。異なる遺伝子と対になったとき、性質が現れるのが顕性遺伝、現れないのが潜性遺伝。

遺伝性疾患が無くならない理由

キャリア・アフェクテッドが繁殖に使われる

ペットの遺伝病が無くならないのは、販売する側が遺伝病のケアをしていないことに原因があります。

ペットは「ブリーダー(繁殖を行う業者)→ペットオークション→ペットショップ→飼い主」という流れで販売されていきます。

遺伝病を抑制するには「クリア(原因遺伝子を持たない)同士の繁殖」を続ける他ありません。
前述の通り、リスクは低いといえども「キャリア」を繁殖に使うと、いつまで経っても遺伝病は無くなりません。

しかし実情はというと、そもそも遺伝子検査などせず、遺伝病を発症するかは飼わなければわからないという状態で流通しています。

なぜクリア同士が使われないのか?

遺伝病根絶のためにベストなのは「クリア同士の繁殖」ですが、徹底するには繁殖に使うすべての動物に遺伝子検査をしなくてはいけません。

遺伝子検査の費用がかかるうえ、「キャリア」「アフェクテッド」と判定された動物は繁殖に使えず、ブリーダーにとってはマイナスにしかなりません。

ここまで見るとブリーダーに責任があるようですが、そういった経緯で産まれた動物たちを気にせず購入するペットショップや消費者たちにも要因があります。

遺伝病を持っているかどうかなど気にせず、見た目のかわいらしさや流行を追ってペットの販売・購入している人がいる限り、「売れるから病気など気にせず繁殖させる」というブリーダーが現れます。

しかも繁殖に対する具体的な規制も無いため、「遺伝病を生む繁殖」が違法とならず、無くならないのです。

まとめ

  • どちらかの親が遺伝病の関連遺伝子を持っている場合、子が受け継ぐ可能性がある
  • クリア同士の交配でない限り、遺伝病のリスクは残る
  • 関連遺伝子を持っていても発症しないことがあるので、検査するまで分からない
  • 遺伝病を気にせず購入する人、販売・繁殖する人がいる限り、遺伝病は無くならない
  • 繁殖を規制する法律が無い

遺伝病でなくとも、見た目を重視した品種改良で骨や関節の弱い動物が作られるなど、問題の絶えないペット業界。

規制は無いものの、ブリーダーの中には大量生産を行わず、動物の健康を第一に考えている人もいます。

規制が無ければ、個々人のモラルに頼るしかありません。一人一人の意識で、全体を変えていくのが大事なのではないでしょうか。

ペットの遺伝病リスクがわかる遺伝子検査

ペット用の遺伝子検査キットは、「クリア」「キャリア」「アフェクテッド」の判定ができます。

自宅で簡単にできるので、病院嫌いのペットや個人的に検査したいという方でも安心です。
遺伝病のリスクが高いと分かれば、発症に備えて生活環境を整えることもできます。

ペット用遺伝子検査Pontely(ポンテリー)では一般向けだけでなく、ペットショップやブリーダー向けの「認定証」発行サービスも行っています。
ペットの購入を考えている人へ安全性をアピールすることができます。

Pontely検査結果の例 Pontely検査結果の例
遺伝性疾患リスクを3段階で判定
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