3万年前、旧石器時代に台湾からきた祖先の航海技術を再現する!

3万年前の航海 テスト航海の様子
3万年前の航海 徹底再現プロジェクト 公式サイトより

国立科学博物館・国立台湾史前文化博物館の共同プロジェクト「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」で、日本人の祖先と同様の航海を再現するための丸木船が制作開始されました。

2年後(2019年)に台湾から与那国島への航海達成を最終目標とするプロジェクトで、2013年の開始からさまざまな研究や実験が行われています。

日本人の祖先には、海を渡ってきたと考えられている人々(ハプログループ)がいます。このプロジェクトが成し遂げられれば、私たちの先祖がどのように海を渡ってきたかという実態が明らかになるのです。

3万年前の航海を再現する!

琉球列島には、約3万5千年前のものとみられる遺跡があります。これはこの時代、人類が海を渡ってやってきたという証であり、それが可能な航海技術をもっていたという意味でもあります。
しかし沖縄周辺は世界最大の海流といわれる黒潮があり、島同士の間隔は数十キロ~数百キロも離れています。当時の人々はどうやって渡ってきたのでしょうか?彼らが使った船は、残されていないのです。

そこで、当時の航海をそのまま再現してしまおうという計画が生まれました。旧石器時代当時の舟の素材として考えられる草・竹・木だけで舟を制作、それを使って実際に台湾~沖縄・与那国島を渡るという「徹底再現」が行われています。

途中断念した草の舟

2016年7月、与那国島に自生するヒメガマという草とトウツルモドキ(ツル植物)を使い、舟を制作。時計やGPSなどの文明機器は一切使わず、風や星だけを頼りに方角を計算し、西表島を目指すというテスト航海が行われました。

しかし予想以上に強い海流で舟が北に流されていくという問題に直面し、途中で航海を断念。やむなく伴走船(ばんそうせん)でヒメガマ舟を回収し、西表島の近くまで引っ張っていきました。

航海自体は失敗に終わりましたが、人々が協力しなければ舟は作れないということ、その時間と労力、知恵と工夫が必要なことから、祖先たちは相当な意気込みで航海に挑んだと体感できたそうです。

台湾と共同制作した竹の舟

2017年6月、日本と台湾の共同で竹の舟を制作、台湾から沖縄を目指す実験が行われました。
竹の舟は浮力・安定性・耐久性に優れていましたが、期待したほど速度が上がらず、黒潮を越えることができませんでした。

航海自体は失敗に終わりましたが、漕ぎ手が海に慣れ、黒潮を体験したこと、GPSなどに頼らない航海術を得るなど、実験しなければ得られない経験値が確実に積まれています。これはまさに、3万年前の人々が他の島へ渡るために積んだ努力と体験に一致すると思います。

2年後の実践に向けて丸木舟を制作

2019年に台湾から与那国島へ渡るという計画を成功させるため、新たに丸木舟の可能性を探り始めました。
帆船にしないのは、1万5千年前の縄文時代や紀元後の弥生時代ですら使われていなかったためです。旧石器時代に使われたであろう技術・材料を使わなければ、「徹底再現」とはいえません。
このプロジェクトが成し遂げられたときこそ、祖先がどのように海を渡ってきたか、実態が明らかになるのです。

海を渡ってきたハプログループ

日本人の先祖は、発祥や分岐によって約10種類のハプログループに分類されています。ハプログループによって、日本へ来たルートや人種が違います。どういった道順を辿ってきたかによって、文化や身体的特徴などもさまざまです。

とくにハプログループBに属する人々は優れた航海技術を持っていたと言われています。東南アジアからオセアニア、さらに南米までも渡ったという彼らの航海技術には、今回のプロジェクトに通じるものがあるかもしれません。
私たちの祖先が海を渡ってきた方法が再現される日も遠くはないでしょう。

関連記事
ハプログループBは数々の島を渡ってきた日本最初の移住民