ミトコンドリア・ハプログループN9は中国広東省付近で誕生したグループで、アイヌや台湾先住民などの祖先にあたります。日本人の約7％が属しています。

ハプログループN9の特徴

アジアの特定地域に分布するグループ

ハプログループNの子系統であるハプログループN9は、約3～4万年前に中国広東省付近（南東部）で誕生しました。インドネシア、フィリピン、中国中央部、朝鮮半島を移動し日本へ入ってきたと考えられています。

N9はさらにN9a、N9b、Yといった下位グループに派生し、オホーツク海周辺から東南アジアまで広がっています。しかし全体で見るとあまり広い分布は見られず、比較的行動範囲の狭いグループです。

中国南部や台湾先住民の祖先

ハプログループN9のサブグループであるN9aは、東アジア、東南アジア、中央アジアなどに分布し、とくに中国南部や台湾の先住民で比較的多く発見されます。

もうひとつのサブグループであるN9bは、日本以外ではほとんど見つかりません。朝鮮半島や沿海地方（ロシア南東部）の先住民でわずかに見られる程度で、ほぼ日本人特有のハプログループです。
日本では、とくに北部へいくほど多く見られる傾向があることから、北方ルートで日本へ入ってきた集団と考えられています。

多湿な環境を好んだ人々？

同じハプログループN9を祖としておきながらも、シベリア方面の寒冷地方や東南アジアなどの温暖な地域へ広がったのは面白いところです。
しかし実は、ロシア東部の沿海地方は湿度の高いモンスーンの影響を受けており、ロシアの他地域に比べると温暖・湿潤な気候です。乾燥地帯への進出が見られないことから、気温より湿度を重視して移動していったのかもしれません。

同様に寒冷地方から日本へきたグループとしてハプログループGがありますが、彼らはシベリアを中心にアメリカ大陸へも進出しています。彼らに比べるとN9bは北方への広がりが狭く、寒冷地帯にあまり適応していないようにも感じられます。

グループによって好んだ気候が異なり、適応能力や体質の違いも見られるのが、ハプログループの興味深いところです。
参考：ハプログループGはATP変換率が高く長距離競技が得意な北方民

子孫はオホーツク文化を作った

ハプログループN9のサブグループであるグループYは、主にオホーツク海周辺の民族が属しています。Yは日本人で1％未満というごく少数のグループですが、アイヌの人々だけで見ると約20％という高頻度のグループになります。

3～15世紀に、北海道北海岸や樺太、南千島ではオホーツク文化というものが栄えていました。漁業や狩猟を中心に、海に依存した生活をしていたオホーツク人ですが、彼らの子孫からはYグループが高確率で見つかりました。同じN9を祖とするN9aとともに、北方から日本へ移動してきた民族と考えられています。

ハプログループN9に属する著名人

お笑いコンビ、オリエンタルラジオの中田敦彦さん、ものまねタレントのコロッケさん、分子人類学者の篠田謙一（しのだけんいち）さんがハプログループN9aに属していると分かっています。

探検家、人類学者、外科医でもある関野吉春さん、タレントのスザンヌさん、ファッションモデルの千葉雄大さん、お笑い芸人のねづっちさんがハプログループN9bに属していると分かっています。

また、北海道や富山県の小竹貝塚から出土した縄文人骨を解析すると、ハプログループN9bが多数を占めていることがわかりました。
N9bは日本固有種ともいわれ、主に北方系縄文人に見られるグループです。北方に限らず、奄美大島や沖縄にも分布しています。

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日本人の大半は9～10のハプログループに分類できます。中にはもっと珍しいグループに属している人もいます。
あなたもアイヌや台湾先住民と共通祖先をもつグループN9に属しているかもしれません。

ハプログループがわかる遺伝子検査キット

ミトコンドリアハプログループはジーンライフ ジェネシス2.0やジーンライフ ハプロなどの遺伝子検査キットで調べることができます。
とくにジェネシスは母方の祖先を知るミトコンドリアハプログループの他に、父方の祖先がわかるY染色体ハプログループも検査できるのでとくにおすすめです。

※Y染色体は男性特有のもので、女性はY染色体ハプログループがありません。

その他のハプログループ

父方の祖先をたどるY染色体ハプログループとは

西ユーラシア最大のハプログループRはアジア・ヨーロッパの分岐点

アフリカ起源最古のハプログループLはミトコンドリア・イヴに最も近い

ハプログループCはモンゴル帝国とアメリカ先住民の共通祖先

中国南部発祥のハプログループN9はアイヌや台湾先住民の祖先

ハプログループM8は北方漢民族や遊牧民にかかわる人種

ハプログループM9はチベットの険しき山々を越えてきた人々

ハプログループFは温暖な地域を好んだ瞬発・パワー型の人種

ハプログループAはシベリアでマンモスを追った狩猟民族

ハプログループGはATP変換率が高く長距離競技が得意な北方民

ハプログループBは数々の島を渡ってきた日本最初の移住民

ハプログループM7は海に沈んだ幻の陸地スンダランドの子孫かも…

東アジア最大集団ハプログループDは弥生時代を支えた長寿民族